ヴィトンノマド財布画像_ヴィトン ユタ バッグ ヴィトンノマド財布生産メーカー|何を買ってヴィトンノマド財布ブランドがいい 武汉西墅专业店


2015-02-18 17:16    ヴィトンノマド財布
「叔母さん、二時間後には帰って来るつもりです。何かおいしいものを作って、待っていて下さい」  金俊明は穏やかに言い、隊員の李大成を連れて出かけて行った。  玄関から部屋に戻った一同は、しばらくは重苦しい沈黙に閉ざされた。竜太も山田曹長も、時折深い吐息をつくばかりだった。竜太の胸は不安で押し潰《つぶ》されそうであった。戦争が終ったとはいえ、ついこの間まで日本軍の兵士であった者を、敵陣の目の前から日本に脱出させようという交渉に出かけたのだ。これまでの日本軍に対するソ連軍の仮借のない攻撃を思えば、正に藪を突ついて蛇を出すの愚に似ていた。それを命を賭《と》してでも成し遂げようとするとは、何たる人物であろうか。考えてみると、自分は一度として金俊明に命乞いはしていないのだと、竜太は思う。確かにすべては金俊明の親切から出たことであった。  一時間が過ぎた。誰もが幾度も柱時計を見上げる。黒の漆《うるし》塗《ぬ》りの柱時計が、いやに重々しく感じられる。剛《ごう》腹《ふく》そうな叔父の金秋日が、幾度となく咳《せき》払《ばら》いをする。ややあって、金秋日が言った。 「船に乗りゃあ、こっちのもんなんですがねえ」 「しかし機雷が浮遊しているとか聞きましたが……」 「なあに、北森さん、わたしたちの持っている漁船の大方は、僅か二十トン級の船でね。長さ二十メートル程度の木造船です。機雷は水深三メートルから四メートルの深さに、錨《いかり》で設置してあるのですよ。木造船は二メートル程の深さで航行しますから、大丈夫ですよ」 「へえー、ぼくはまた、機雷がぽかぽか海の上に浮かんでいるのかと思っていました」  金秋日はちょっと笑ったが、 「機雷は、われわれ焼玉エンジンで走る者たちには、恐ろしくも何ともないが、ソ連軍に脱出が見つかると、これは大変だ。いきなりぱくられる場合はいい。すぐさま銃口から火が噴くこともあるでしょう。そんな話をこのところ何度か聞いていますよ。それもこれも承知の上で、俊明は動いているんですが……」  再び一同は沈黙した。  時間はたちまち過ぎていく。金俊明が戻って来る筈の二時間もとうに過ぎた。いつの間にか叔父の金秋日も、叔母の車海姫も席を立って、山田曹長と竜太の二人だけになった。竜太の目に、銃弾に倒れた金俊明の姿が浮かんだ。生々しい血まみれの姿だった。山田曹長はと見ると、じっと両手を組んで目をつむっている。必死に何者かに祈っているようだ。竜太も先程から一心に祈っていた。 (どうか金隊長の命を助けて下さい。どうか無事に、この家に帰して下さい)  同じことを繰り返し祈る。祈りながら、何の神に祈ってよいのか、頭が空白になる。竜太は、毎日、朝の六時と、午後の三時と九時には祈っているという芳子の祈りに縋《すが》りたくなっては祈った。 (神さま、わたくしの命は差し上げます。金隊長だけはお助け下さい)  竜太も山田曹長も息づまる思いだった。もし芳子の信ずる神がいるなら、とにかく助けて欲しい。竜太は幾度も幾度もそう祈りつづけていた。と、玄関の戸の開く音がして、 「只今!」  と大声で叫ぶ金俊明の声がした。